山垣濤垣 池上樵人 |
||||||||||
作品・１９７８年 姫海道是よりまこと弥生空 湖北なる鉄路間近に春障子 鴨引くや老が手を置く膝頭 花胡桃揺れ出し姥捨昼曇る 母が灯し嫂が吊り岐阜提燈 杏熟れその奥山襞七重八重 富嶽現る剣先薔薇の剣の先 |
 |
|||||||||
|
|
||||||||||
作品・１９７９年 春愁や烏賊火の光芒横長に 土用芽のくれなゐ赤彦歌碑の前 墓掃除のけむり高々信濃口 迎火や干豆殻にかそけき音 秋晴を背負板（しょひこ）の胸綱燃えて赤 坂すべる一葉に闇くる木曾の谷 秋深き一茶の蔵に忘れ傘 |
 |
|||||||||
|
|
||||||||||
作品・１９８０年 湖に出て男体颪縹色 春浅し鱒守小屋の古時計 けぶりては三日血川に余花のあめ 初節句梯子を支ふ母の声 思惟仏のおちょぼ口なる芋の花 西瓜が坐し孫たちが坐し盂蘭盆会 日日草一枚だけの蜑の窓 その先も秋風の渦勿来越え |
 |
|||||||||
|
|
||||||||||
作品・１９８１年 繭玉の寝伏し嬬恋道祖神 春暁の渚に跳ねて神の鹿 みちのくへ一呼気一呼気夏燕 渦潮の奈落の蕊に白む秋 若き司祭二人腕組み霧の音 良寛堂ちかぢか坐る小春雲 鮭揚り朝日にあかあか越の婆 笹鳴や線香頒け合ふ女弟子 |
 |
|||||||||
|
|
||||||||||
作品・１９８２年 成人の日の雪雲ちらす蝶ヶ岳 寒雲上りむらさき滴り竹生島 雪国の日の扉なる大江山 戻り寒微音だになし忘れ潮 耕牛啼き蓬莱（とこよ）の海の西深し 立春大吉舟屋の前に赤き泛子 烏賊干すや春の蔵の戸護符さはに 茅花流しの果な涅槃し給へり 夏焚火焔こもらせ男坂 |
 |
|||||||||
|
|
||||||||||
池上樵人 本名 勇司 １９２５年 長野県生れ １９４７年 萬緑入会 「萬緑」同人 受賞歴 萬緑新人賞 萬緑賞 俳人協会賞 その他多数 作品は、 氏のご了解を得て、 館主により抜粋、 掲載させて もらいました。 |
 |
|||||||||